心が軽くなる歩き方:マインドフルネスウォーキングの実践
日々の生活の中で、漠然とした疲れやストレスを感じることは少なくないかもしれません。どうにか心身をリフレッシュしたい、少しでも前向きな気持ちになりたいと感じていらっしゃる方もいるでしょう。特別な時間を確保したり、激しい運動をしたりするのは難しいと感じる方もいるかもしれません。
しかし、実は私たちの最も身近にある「歩く」という行為の中に、心と体を整える大きな可能性が秘められています。ただ歩くだけでなく、少し意識を向けることで、それは「マインドフルネスウォーキング」となり、心の状態に穏やかな変化をもたらす助けとなります。
この記事では、ウォーキングが心身に与える良い影響、そしてウォーキングにマインドフルネスの要素を取り入れる具体的な方法についてご紹介します。
ウォーキングが心にもたらす穏やかな変化
軽い運動であるウォーキングは、身体的な健康増進だけでなく、私たちの心の状態にも良い影響を与えることが知られています。
運動によって脳内では、セロトニンやエンドルフィンといった神経伝達物質の分泌が促進されると考えられています。セロトニンは心の安定や幸福感に関係すると言われ、エンドルフィンは自然な鎮痛効果や気分の高揚をもたらすと言われています。ウォーキングのような一定のリズムで行う運動は、これらの物質の分泌を促しやすいと言われています。
また、歩くという行為自体が、頭の中を整理する時間を与えてくれます。考え事をしながら歩いていると、時にふとしたアイデアが浮かんだり、悩みが少し小さく感じられたりすることがあります。これは、歩行による身体のリズムが、思考のリズムにも影響を与えているのかもしれません。
しかし、「マインドフルネスウォーキング」は、さらに一歩進んで、この歩く時間を意図的に心身のリフレッシュに活用しようというものです。
「マインドフルネスウォーキング」とは
マインドフルネスとは、「今この瞬間の体験に意図的に注意を向け、評価や判断をせずにただ観察すること」です。マインドフルネスウォーキングは、このマインドフルネスの要素を歩くことと組み合わせた実践方法です。
つまり、目的地に早く着くことや、カロリーを消費することだけを目的とするのではなく、歩いている「今この瞬間」に意識を向け、五感を通して得られる様々な感覚や体験をありのままに感じ取ることを重視します。
マインドフルネスウォーキングを実践してみましょう
特別な準備は必要ありません。いつもの散歩や通勤・買い物のついでに、少し意識を向けるだけで始めることができます。
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始める前に立ち止まる
- 歩き始める前に、数秒間立ち止まってみましょう。
- 軽く目を閉じ、現在の自分の呼吸に意識を向けます。吸う息、吐く息の長さや深さ、体に触れる空気の感覚などを感じてみます。
- 足の裏が地面に触れている感覚に意識を向けます。地面の硬さ、温度、自分の体重がかかっている感覚などを静かに観察します。
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歩きながら意識を向ける
- ゆっくりと一歩を踏み出します。
- 足を持ち上げ、前に出し、そして地面に着地するまでの一連の動きに意識を向けます。足裏が地面に触れる時の感覚、重心の移動などを丁寧に感じ取ります。
- 体の他の部分の感覚にも注意を広げてみましょう。腕の振り、体のバランス、風が肌に触れる感覚など。
- 次に、視覚、聴覚、嗅覚など、他の五感に意識を向けます。目に入る景色、聞こえてくる音(鳥の声、車の音、風の音など)、漂ってくる匂いなどを、良い悪いという判断を挟まずに、ただ観察します。
- 様々な感覚を意識しているうちに、頭の中で思考が浮かんでくることに気づくかもしれません。過去の後悔や未来への心配、今日の献立など、様々な考えが巡るでしょう。それは自然なことです。思考に気づいたら、「あ、今考え事をしているな」と認識し、優しく意識を再び体の感覚や周囲の五感へと戻します。思考に巻き込まれそうになっても、自分を責める必要はありません。ただ繰り返し、穏やかに注意を戻す練習です。
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歩き終えた後の余韻を味わう
- 歩き終えたら、再び立ち止まります。
- しばらくその場に立ち、歩いた後の体の感覚(心拍、呼吸、温かさなど)や、心の状態(歩き始める前と比べてどう変化したか)を静かに感じてみましょう。
継続するためのヒント
- 短い時間から始める: 最初は5分や10分からでも構いません。無理なくできる時間から始め、慣れてきたら徐々に時間を延ばしてみましょう。
- 完璧を目指さない: 常に集中していなければならない、と気負う必要はありません。気が散るのも自然なことです。大切なのは、気づいた時に意識を戻すというプロセスを繰り返すことです。
- 楽しむ気持ちを持つ: 歩くコースを変えてみたり、季節の移り変わりを感じてみたりと、楽しむ要素を取り入れると続けやすくなります。自然の中を歩くのは、五感が刺激されやすく特におすすめです。
- 日常生活に取り込む: 通勤途中の一駅分を歩いてみる、休憩時間にオフィス周辺を少し散歩してみるなど、習慣化しやすいタイミングを見つけてみましょう。
まとめ
マインドフルネスウォーキングは、身体を動かすことと、心に意識を向けることを組み合わせた、誰でも手軽に始められる実践方法です。特別な場所や道具は必要ありません。日々の「歩く」という行為に少しマインドフルネスの要素を取り入れるだけで、心身のリフレッシュに繋がり、忙しい日常に穏やかな時間を作り出すことができます。
まずは、今日か明日、少しの時間でも構いませんので、意識的に「歩く」時間を持ってみてはいかがでしょうか。小さな一歩が、あなたの心と体の豊かさへの扉を開くかもしれません。